「タイパ」は受験に役立つか? ②

query_builder 2023/05/08
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 前回は、授業動画の再生速度を速めて視聴した学生たちの成績(平均76~77点)よりも速めずに視聴した学生たちの成績(平均78点)の方が若干上回っていたという近畿大学(大阪府)の調査結果を紹介しました。そして、大学側が「授業動画の視聴速度と成績に相関は見られない」と結論付けたことも(『朝日中高生新聞』より)。


 タイパ(=タイムパフォーマンス=時間的お得感の大小)が受験勉強にどれだけ関わっているのかを考察するというのが、前回&今回のブログの主な目的ですが、上の近畿大学の事例はヒントを与えてくれるかもしれません。つまり、「タイパの良さ」ということを金科玉条のごとき「自明の理」として鼻から無批判に追求することはやめておいた方が良さそうだということです。なぜか。学習内容には、タイパを重視した効率主義的な勉強法が功を奏する場合と、そのような勉強法が空回りしてしまう場合とがあるように思われるからです。前者は例えば暗記主体の学習、後者は例えば物事の原理を理解する学習です。両者の違いは「分からない」ということがあるか否かという点に見出すことができます。暗記に「分からない」はないでしょう。機械的に頭の中にインプットすればそれで目的は達成されるのですから。一方、物事の原理を理解しようとする際には、なぜそれがこのような数式で表されなければならないのか、なぜそれがこのような解答文に置き換えられねばならないのか、今の自分には「分からない」ということは十分にあり得ます。


 前者ではタイパ重視の学習法はある意味必然性を持っています。何せ、受験生には覚えなくてはならないことが山ほどあり、しかもそれは、「試験当日がやって来るまでの間に」というタイムリミットが前提された話だからです。もちろん後者も、前者と同様のタイムリミットありきの話であることに変わりはありません。しかし、物事の原理というのは、そのからくりを自分なりに納得することができておかないと、入試本番に出題される応用問題を解こうとする際に自信をもって使いこなすことが非常に困難です。そして、最終的に自信をもって使いこなすことができるようになるには、「分からなかった」当初の段階において、その分からなさと真正面から向き合い、自分がどうしても納得できずにいるということにこだわってみる(=ああでもない、こうでもないと、試行錯誤を繰り返す)ことを避けて通るわけには行かないわけです。場合によっては、納得するまでに数日間、あるいは数週間・数か月間かかるかもしれない。先に「タイパの良さを鼻から無批判に追求することはやめた方が良さそうだ」と述べたのは、このことに由来します。


 原理というのは、それを納得するまでには時間がかかるかもしれませんが、一度納得できたならば、後は一気呵成に問題が解けるようになることが少なくありません。その意味では、広い視野から見た場合、効率性の良さ(=タイパの良さ)ということと逃げずに悩み続けるということとは、必ずしも「相容れない」とは言い切れないような気もします。


 


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